< 2012年11月12日リリース>
Skip Skip Ben Ben
"Sacrifice Mountain Hills"
1. Last Light
2. La's Lasta
3. Parking
4. Walkmen
5. NNYYY
6. Sand
7. Dead Floor
8. かぜ
9. Childhood
このアルバム"Sacrifice Mountain Hills"を聴いたときは正直驚いた。1曲目"Last Light"を筆頭に、本作を通して鳴らされる歪んだ音は、かつてあの伝説的シューゲイザーバンドが「愛のない世界」の中で鳴らしていたそれを、見事なまでに現代に復活させたものであったからだ。そして、このSkip Skip Ben Benが台湾出身女子のソロプロジェクトだと知った時には、さらなる驚きを隠せなかった。
Skip Skip Ben Benはタワーレコード限定でCD化された本作によって、2014年に日本デビューを果たした(発音は"バンバン"らしいのでご注意)。日本でリリースされたCDのジャケットは、上に載せたものとはまた少し変わっている。透明雑誌などのインディーバンドとともに、台湾から世界に向けて活躍が期待される重要バンドだ。
一方、世界的なシューゲイザーシーンの状況と言えば、2000年代後半から2015年にかけて、90年前後のムーブメントを牽引してきたバンドたちの再結成ラッシュが続いた。2008年にはChapterhouseやSwervedriver、2014年にはSlowdiveやRideといったバンドたちが再結成。新作こそあまり出されていないものの、彼らは精力的なワールドツアーを行い、シューゲイザーシーンに再びじわじわと火が付きつつある。
しかし、そういった近年のシューゲイザーシーンの復権は、90年代当時と変わらず、ある一つのバンドに左右されていると言っても過言ではない。My Bloody Valentineである。シューゲイザーバンド再結成ラッシュの口火を切ったのは、やはり2008年のマイブラの再結成だったのだ。
そんなマイブラのケヴィン=シールズに見出された才能こそ、このSkip Skip Ben Benだったのであり、マイブラの台湾公演にてオープニングアクトを務めたことはあまりに有名だ。シューゲイザーの影響を受けた若手バンドは多数いるが、これほどまでにマイブラを彷彿とさせる轟音サウンドを奏でているバンドは他にいない。リリック面では、轟音の中で耳も目もおかしくなってしまったような、難解で不可思議な歌世界が広がる。"even I hit you in the ground"や"she is burning down them all"といった、Ben Ben自身のフラストレーションをぶちまけるような強烈な歌詞も印象的だ。
本作の日本盤リリースをきっかけに、2014年には各地のライブハウスをめぐる来日ツアーも行った。Skip Skip Ben Benは、まさにアジアを代表するシューゲイザーバンドにのし上がったのだ。そして、かつてのような一過性のムーブメントで終わらないためにも、欧米だけでなくアジアからこうしたバンドが現れてくれるのは非常に心強いと言うほかない。
Written by 信太卓実
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