The 1975 "I Like It When You Sleep, For You Are So Beautiful Yet So Unaware of It"

<2016年2月26日リリース>

1.The 1975

2.Love Me

3.UGH!

4.A Change Of Heart

5.She's American

6.If I Believe You

7.Please Be Naked

8.Lostmyhead

9.The Ballad of Me And My Brain

10.Somebody Else

11.Loving Someone

12.I Like It When You Sleep, For You Are So Beautiful Yet So Unaware of It

13.The Sound

14.This Must Be My Dream

15.Paris

16.Nana

17.She Lays Down

 まるで自己陶酔かの如く長いアルバムタイトル。聴く前から、「嗚呼ついにこのバンドは、思い上がりの強いアイドルバンドになってしまったのか」と少し落胆を覚えたものだった。しかし、一聴してみると思い上がっていたのは自分の方だったことに気付く。むしろ彼らの音楽性は、驚くほど奥行きを深めていた。この2年間で作られた曲のみで構成されたという本作は、まだ青かった前作と比べると格段にアダルトな1枚に仕上がっている。まさに深化だ。そして本作は全英のみならず、全米チャートでも1位を獲得。UK出身バンドが2ndアルバムでこれほどの名声を獲得するのは、久々のことではなかろうか。

 1stアルバム『The 1975』は、人気を我が物にしたキラーチューン”Chocolate”や、シンセを大音量で鳴らした壮大な”Sex”などに代表されるように、明るく弾けるナンバーの宝箱だった。対する本作は、80’sを出自とする極上のポップチューンの連続で幕を開けると、中盤はアンビエントな楽曲や『Somebody Else』のような美しいバラードが続く。こうした楽曲は前作ではInterludeに過ぎない使われ方だったが、今回はどっしりとアルバムの中核として腰を据えている。そして、ラストの『She Lays Down』はなんとアコースティックギターの弾き語りと来たから驚きだ。マシュー(Vo)の歌声も一辺倒にならず、アルバムの構成に合わせて、甘く、深く聴く者の心に語り掛ける。

 1stから2ndの期間に驚くほど多様な音楽性を吸収した彼らの作品からは、もはや「ロックバンド」という枠にはまることを拒否するかの如き強い意志を感じた。この74分間の甘美な世界にしっかり浸ってみると、長ったらしかったはずのアルバムタイトルも、彼らの音楽への貪欲さをまさに象徴しているのだと分かり、愛おしくすら感じられるのであった。ティーンからアダルトへと、リスナーの間口を広げることに成功した作品ではあるが、それ以上に、The 1975というバンドの成長物語の一つとして、この作品は繰り返し長く聞かれ続けるに違いない。

 そして本作を引っ提げて、The 1975は8月のサマーソニック2016で来日を果たす。Radioheadの裏という「不利」な時間帯のステージとなったが、そんなことは一切関係ないと言わんばかりに、ソニックステージのオーディエンスは一心にThe 1975の登場を待ち続けた。筆者もそんな一人である。鮮烈な輝きを放つジャケット写真のように、多彩な楽曲に彩られたパフォーマンスは幸福感に満ちていた。スローなバラードが効果的に挿入されたセットリストは、オーディエンスにうっとりとした至高の時間を提供する。そして、間奏でのジャンプが定番の”The Sound”は、この日一番の盛り上がり。楽しすぎた。緩急を自在に操ったサマソニでのステージは、The 1975が10年代のUKを牽引していることのみならず、若くしてすでに頂に手をかけていることを高らかに宣言して見せた瞬間であった。

Written by 信太卓実

TS WONDERFUL MUSIC

音楽ライター目指しています。 いろんな音楽を紹介していくので、ぜひ聴いてみてください!!音楽で人生を豊かに。

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