シンガーソングライター吉澤嘉代子の2015年は、ミニアルバム『秘密公園』のリリースと、全国を巡る「秘密ツアー」で幕を閉じた。そして、彼女の2016年は2ndフルアルバム『東京絶景』のリリースと、再びの全国ツアーで幕を開けようとしており、まさにブレイク目前と言って過言ではない状況だ。
この"ストッキング”は彼女自身も非常に大切な曲だと述べており、自他ともに認める吉澤嘉代子の代表曲だ。この曲を聴くと、吉澤嘉代子の音楽は一見非常にシンプルで聴きやすい楽曲に思われるかもしれない。しかし、昨年の1stフルアルバム『箒星図鑑』を聴けば、親しみやすくキラキラしたメロディの上に、恋愛中毒で精神が狂っているのではないかと疑うほど、毒の強いリリックが散りばめられていることに気付くはずだ。会いたいけど素直になれないような恋愛曲がチャートインする中で、「電線を綱渡りしてでも会いに行き、人の道を外れてもいいから恋をしたい」と歌うのが吉澤嘉代子である。
吉澤嘉代子の歌詞世界を象徴する2曲が、上に挙げた”未成年の主張”と”美少女”だ。どちらも恋をしたい女の子の曲で、メロディはキャッチーなのでサラサラと聴くことができる。しかし、心地よく聴いていると、上記のようなストーカーとも死に際ともとれるようなドキッとするセリフが急に入っていることに気づくだろう。これこそ吉澤嘉代子のもつ歌詞世界の最大の魅力である。狂気から滑稽さまで幅広く使いこなし、何気ないような曲に魔法と中毒性を散りばめるのである。変幻自在な伸びのある歌声で、楽曲の主人公になりきって歌い上げるのも彼女のパフォーマンスの魅力のひとつだ。
そんな思わず二度見してしまうような歌詞表現が、今月リリースの新作『東京絶景』でどのような発展を遂げているのか、大きな注目点である。すでに年末リリースのミニアルバムで、”綺麗”や”ユキカ”といった新作収録曲を聴くことができる。他にも“胃”や“ガリ”といった独特なタイトルの収録曲を見れば、今年も彼女の特異な言語表現には期待せざるを得ない。
また、春には全国ツアー「夢をみているのよ」がスタートし、東京国際フォーラムでのライブが控えている。2度のライブハウスツアーで赤坂 BLITZや恵比寿リキッドルームを経験し、自らのスタイルを確立させてきた彼女が、より大勢の観客を前にどのようなパフォーマンスを見せるのか。2016年の吉澤嘉代子に注目したい 。
Written by 信太卓実
(本文は2016年2月7日に執筆したものの再掲です)
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