<2016年4月8日リリース>
Mayer Hawthorne
"Man About Town"
1. Man About Town
2. Cosmic Love
3. Book of Broken Hearts
4. Breakfast in Bed
5. Lingerie & Candlewax
6. Fancy Clothes
7. The Valley
8. Love Like That
9. Get You Back
10. Out of Pocket
今年のサマーソニックのラインナップがアツい。特に今回注目したいのは、東京Day2(大阪Day1)の出演者たちだ。現UKシーン最重要メンであるThe 1975に James Bay。日本のロックシーンを牽引する[Alexandros]やサカナクション。今後の活躍が期待される新鋭バンドであるNothing But ThievesやSunflower Bean。90年代以降のロックシーンを大きく動かしてきた大御所SuedeおよびRadiohead。そして、若手でありながら音楽シーンには欠かせない存在となった2人のホワイトソウルシンガー、Mark RonsonとMayer Hawthorneだ。
思えば近年、ヒップホップやR&B、ソウルといったブラックミュージック系の豊作ぶりが目立つ。というよりも、日本にいて何気なく音楽を聴いているだけでも、ブラックの影響力を感じざるを得なくなってきたという方が正しいだろうか。記憶に新しいBruno MarsやPharrell Williamsの大ヒット、グラミー受賞で一躍スターに上り詰めたパフォーマー=Kendric Lamar、そして来日の記憶も新しいD’Angeloの14年ぶりの新作(かつ大傑作)発表。他にも若手・ベテラン双方による断続的な良作リリースはもちろん、ジャンル横断的なミュージシャン同士の交流(例えばKanye WestとArca、あるいはDaft PunkとNile Rodgers)も頻繁にみられるようになり、多くのヒットナンバーを生み出した。そして、ブラックミュージックの影響を公言するSSW星野源が日本で大ブレイクを果たしたことも、国内で改めてブラックに目を向けるための起爆剤となった。
そんな中で白人ソウルシンガーの台頭も見逃せない。代表格はやはりBruno Marsとの共作による大ヒット”Uptown Funk”を生み出したMark Ronsonだが、デビュー以降毎度良作を生み出し続け、Jake Oneとのコラボユニット=Tuxedoでのリリースも話題となったホワイトソウルシンガー=Mayer Hawthorneを忘れてはならない。MayerはPitbullやPharrellなどの売れっ子たちとの共作を果たしたのはもちろん、2013年のアルバム『Where Does This Door Go』では、メジャーデビューして間もなかったKendric Lamarとのいち早い共演を果たし、ポップチューンの羅列に終わらない切れ味のある傑作を作り上げて見せた。
そして、満を持して今年4月にリリースされたMayerの新作『Man About Town』は、スローなテンポでゆったり踊れる大人なソウルナンバーが並ぶ快作となった。40秒の美しいアカペラで幕を開けると、甘い歌声に魅了されるミドルな”Cosmic Love”へ。その後も哀愁漂うソウルナンバー”Breakfast in Bed”や”Fancy Clothes”、ジャケット写真のイエローが象徴するような陽気なサウンドメイクの”Book of Broke Hearts”や”The Valley”といった交互の構成でリスナーを魅了する。そして、カタルシスは8曲目の”Love Like That”へ。Tuxedoで掴んだアッパーなディスコサウンドの感覚がこの曲で生かされており、イントロが鳴っただけで今にも踊りだしたくなるような、ストレートなダンスチューンだ。サビの英語が非常にわかりやすくフラットなリリックになっていることから、サマソニのステージでも観客と一体となって歌い上げられる1曲になりそうだ。
作品としての面白さや楽曲の振れ幅という点では、前作”Where Does This Door Go”に軍配が上がるという気もする。しかし、音楽性が多様化し、ブラックミュージック豊作と言われるこの10年代に、あえて難解さ不要のストレートなソウルアルバムをリリースしたMayer Hawthorne。それはPharrellやPitbullとの共演、およびTuxedoとしての活動を通して、彼が最も自分らしいと感じる音楽作りを追及した先に完成した作品であり、いつの時代にも心の拠り所にされてきた「誰もが踊れるソウルミュージック」である。と同時に、それこそBruno MarsやMark Ronsonのようなヒットメイカー、あるいは女性R&Bシンガーたちとの共演によって、まだまだ素晴らしい作品を生み出せるという余力も感じるので、次回作でどう捻りを加えてくるか注目しておきたい。
とまあ、難しいことは考えず、今年のサマソニでのMayerのステージは思う存分楽しみたいところだ。祝来日!
Written by 信太卓実
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