Perfume "COSMIC EXPLORER"

<2016年4月6日リリース>

Perfume

”COSMIC EXPLORER”

1. Navigate

2. Cosmic Explorer

3. Miracle Worker

4. Next Stage with YOU

5. STORY

6. FLASH (Album-mix)

7. Sweet Refrain (Album-mix)

8. Baby Face

9. TOKIMEKI LIGHTS (Album-mix)

10. STAR TRAIN (Album-mix)

11. Relax In The City

12. Pick Me Up

13. Cling Cling (Album-mix)

14. Hold Your Hand

 現在の日本のアーティストで、「世界進出」というワードを最も想起させるのはBabymetalだろう。アイドルとメタルのハイブリッドという、非常に特異的かつ日本的な掛け合わせによる世界征服は、邦楽界にとっても世界中のメタルファンにとっても大変意義深いブレイクとなった。しかし、真の意味で00年代後半以降のアイドルグループの復権を果たし、地道な努力と堅実なリリース&ライブ活動によって、海外進出の道を切り開いたアーティストといえば、やはりPerfumeだろう。作品をリリースするたびに成長への意欲を高め続けてきた3人が、およそ2年半ぶりのアルバムリリースとなる今回は、自らを『Cosmic Explorer』と名乗り、これまで以上に世界進出への自信を高々と掲げて見せた。

 まず一聴して感じるのは、プロデューサー=中田ヤスタカのサウンド作りが、かなり攻めを意識したものになっていること。1,2曲目の”Navigate”~”Cosmic Explorer”から、映画音楽に起用されるかのような壮大なメロディで幕を開け、冒頭から攻めに攻めまくる。3~5曲目の”Miracle Worker”, “Next Stage with YOU”, “STORY”の流れは、もはや圧巻としか言いようがない。特に”STORY”は、2015年のSXSWおよび武道館ライブでパフォーマンスが披露されており、楽曲を聞くだけで、自然とスクリーン(本人たちは網戸と呼んでいたが笑)を用いた華麗かつ壮大なダンスパフォーマンスが脳裏に浮かぶ。6曲目は映画「ちはやふる」の主題歌となっている”FLASH”であり、その後も既存のシングル曲たちをAlbum-mixを交えながら立て続けに並べ、最後の最後まで攻めまくるラインナップだ。14曲の壮大な音世界を端から端まで駆け抜けるような、充実したダンスアルバムに仕上がっている。

 しかし、ただ単調にアップチューンを乱立したアルバムではなく、1曲ごとに中田ヤスタカのこだわりを感じ取れるのも大きな魅力だ。例えば、アルバムの折り返し地点に収録されたミドルテンポな”Baby Face”が良い緩衝材の役割を果たしている。インタビューでは「ついに年下男子の曲が出てきちゃったか~!」と笑い飛ばしていた3人だが、ワールドワイドなアーティストになってもこうした曲を歌えることに、Perfumeにしか持ちえない圧倒的なアドバンテージがある。

 さらに注目したいのは、3人の歌い分け。2011年のアルバム『JPN』にて、より顕著にメンバーの声質を意識し始めた中田は、『JPN』のみにとどまらず、攻撃性の強い本作でも見事に3人の声の特徴を掴み、聞き手をハッとさせる歌い分けを行って見せた。これらが顕著なのは、先ほど挙げた”Baby Face”や、”Miracle Worker”, ”Sweet Refrain”, “TOKIMEKI LIGHTS”といった楽曲たちだ。声質の異なるかしゆか、のっち、あ~ちゃんの3人が、どのタイミングで何を歌えば聞き手の心にグッと刺さるか、曲作りを重ねるごとに中田自身もその見極めスキルを高めているように感じる。思えば、capsule、きゃりーぱみゅぱみゅ、三戸なつめなど、中田がPerfume以外で曲作りを行う際のボーカリストは一人であることが多い。つまり、歌い分けという要素で曲の面白さを高められるのはPerfumeだけであり、メンバーの個性を大切にするPerfumeのプロデュースにおいては、それ自体が重要なファクターなのだ。メジャーデビュー当時を思えば、エフェクトを多用することこそがPerfumeらしさだったが、それももう過去の話。今は3人のより生に近い声で、どこまで作品の質を高められるかというNext Stageに差し掛かっている。

 2015年に結成15周年、メジャーデビュー10周年という大きな節目を迎えたPerfumeの3人。「自分たちはどこまでやっていけるんだろう」という一抹の不安と常に戦いながらも、メンバーとチームを信頼して駆け抜けてきた結果、アニバーサリーイヤーを終えた今年も、これほど素晴らしい作品を届けてくれた。そして、昨年のドキュメンタリー映画や、楽曲”STAR TRAIN”の中で、3人はこれからも挑戦を続けていくという固い決意を示してくれた。その決意の表れが『Cosmic Explorer』である。

 Perfumeの作品は、ライブでのパフォーマンス披露をもって初めて完成となる。今年は日本各地の全国ツアーに加えて、初の試みとなるアメリカツアーを開催。Perfumeにとって、勝負の地=アメリカでのツアーは、これまでの3度のワールドツアーよりもさらにハードルの高いチャレンジングなものとなるだろう。しかし、幼いころから常にステージに上がり続けてきた3人は、他のどのアーティストよりも「お客さんを楽しませる方法」を知っている。そして、Perfumeのライブ空間には、常にその想いがあふれている。会場が広くなり、パフォーマンスが高度化し、楽曲が多様化し……何より本人たちが年齢を重ねて大人になっていっても、Perfumeのライブにはいつも同じ空気が流れ続けている。Perfumeは、この戦い方を貫くことで15周年のアニバーサリーを迎えることができた。だからこそ、アニバーサリーを終え、新たな船出となる今年のツアーには、これまで以上に大きな意味がある。

変わらない中で、何を変えていくか。変わっていく中で、何を残していくか。非常に難しい問いであるが、この悩みを抱えられるということ自体が、一流パフォーマーとして戦い抜いてきた何よりの証なのである。私にとって一番の生きがいであるPerfumeの3人は、我々を『Cosmic Explorer』という船に乗せて、新たな世界へと連れ出してくれるに違いない。

 がんばれ、Perfume!! 6月の幕張で会いましょう。

Written by 信太卓実

TS WONDERFUL MUSIC

音楽ライター目指しています。 いろんな音楽を紹介していくので、ぜひ聴いてみてください!!音楽で人生を豊かに。

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